2005年01月10日作成
2005年01月15日更新

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大井川鐵道(2004年10月07日)(その6)

The Special Providence - 旅行日記 - 大井川鐵道(2004年10月07日)(その6)
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地図2 大井川鐵道井川線路線図
地図2 大井川鐵道井川線路線図

ここで井川線の旅に出発する前に、再び地勢を整理しておきましょう。大井川鐵道井川線は千頭から井川までの25.5kmを結ぶ鉄道です(地図2)。(地図2)は手書きの地図で縮尺や位置関係がかなりいい加減ですので、その点をご了承ください。井川線の車両基地は、千頭構内にも車両が留置されていましたが、隣の川根両国駅に隣接して設置されていて、機関車などはそちらをねぐらにしています。途中、奥泉と接岨峡温泉の駅の周囲に多少の集落がある他はほとんど人が住んでいない地帯を走ります。長島ダムの建設に伴って付け替えられた区間は、アプトいちしろ(旧線では川根市代)-接岨峡温泉間であり、このうちアプトいちしろ-長島ダム間がアプト式鉄道となっています。非電化でディーゼル機関車が推進/牽引しますが、アプトいちしろ-長島ダム間のみDC1500V電化されていて専用のアプト式電気機関車ED90型が補機に付きます。

歴史をたどると、1935年に大井川電力が大井川ダムを建設するために資材輸送用として建設したのが始まりで、千頭-奥泉大井川堰堤(現在のアプトいちしろ付近)間が開業しています。この時は762mmゲージで開業しましたが、ダムが完成すると木材を川に流して輸送していた業者への補償として木材の鉄道輸送を始めたため、大井川鐵道への直通輸送の便を考慮して1067mmゲージに改軌されました。ただし、発電所の専用鉄道として建設された経緯からゲージは1067mmになっても、車両限界は相変わらず小さいままです。その後戦時中の電力の国家管理の時代を経て戦後の地域独占型電力会社の時代になり、これらのダムや鉄道は中部電力が引き継ぐことになります。そして1954年に上流の井川ダムを建設するために井川(さらにその先の貨物専用駅堂平)まで延長工事が完成しました。中部電力の専用線だった時代から沿線住民へのサービスとして客車を連結して無料で輸送を行っていたのだそうですが、ダムが完成した後、井川線は大井川鐵道に貸与されてこの時から通常の鉄道事業として運営が行われることになりました。この経緯で今でも井川線の線路設備は中部電力の所有であり、また井川線の営業に伴う営業損失は全て中部電力によって補填されています。当初は発電所の資材輸送などにどうしても鉄道が必要だったという事情が分かるのですが、今のように道路が十分整備されてなお中部電力が井川線の存続に資金を出しているのは不思議ではあります。

また、かつては沢間から分岐して寸又峡へ行く森林鉄道がありましたが、1969年に廃止されています。この森林鉄道も元は発電所の建設のために電力会社が建設したものだったそうですが、762mmゲージだったため千頭-沢間間は三線軌だったそうです。今でも寸又峡には森林鉄道の車両が展示されています。


周囲で写真を撮りまくっているうちに、3両の客車は乗客で一杯になってしまったのでほとんど選択の余地無く先頭の制御客車に。客車の記号がクハなのですが、2両目はスロフ。グリーン車なのでしょうか(笑)。スというかなり重い重量記号が付いていますし、その割に制御客車は電車方式の記号が付けられていますし、謎です。さて、ゴロゴロと走り出して、25km/hほどで進んでいきます。本当にゆっくり。隣の川根両国には井川線の車両基地があることを予習で知っていたのでいろいろ見回すと、車両基地を見下ろすのにちょうどよさそうな吊橋が架かっていたので翌日の再訪を期して前進。沢間でも森林鉄道が分岐していた跡を探しますが、全然見つかりませんでした(写真51)。そして次の土本へ。土本の少し手前で鉄橋を渡ります。ここは3河川の合流地点にあり、車窓も素晴らしいところ(写真52)。(写真52)は、大井川・寸又川の合流地点とキャプションをつけましたが、実は車窓左側を写しているので、映っているのは寸又川に横沢が流れ込んでいる地点だったりします。そして土本駅。ここは先の地図で見ると、西側から寸又川を渡る橋が架かっていて道路はそれだけで繋がっていることが分かりますが、この橋自体が実は最近完成したもので、それまで土本地区は井川線を使う以外に外に出る手段がない場所でした。では井川線開通以前はどうだったのかというと、推測ですが大井川の水運に頼っていたのではないでしょうか。道路が繋がるまでは急患発生時には医師が井川線の鉄橋を渡って駆けつけていたとか。また駅の周囲に民家は4軒しかなく、そのうち3軒が土本姓。それにちなんで土本駅と名付けられたとか。


井川線の車中は大賑わい。ほぼきっちり席は埋まっていました(写真53)。(写真53)は、土本駅手前の鉄橋を渡っている時に写したもので、写真右側が大井川、左側が寸又川です。そして川根小山駅到着。ここで対向列車を待ち合わせます。車窓右側に「一駅一話題」と称する看板が立っていて面白かったので、これから先もこのようなものがあるのかと期待したのですが、ここ以外では1つも見当たりませんでした(写真54)。この日英水電小山発電所、大井川の屈曲部に水路トンネルを掘って水力発電に使ったと書いてありますが、ここの屈曲部ですね。確かにちょっとつなげればすぐ発電ができそうな地形です。自然にこのような地形ができるのが不思議です。交換列車到着動画(QuickTime形式、20秒、3447KB)。停車中に窓からカメラを出して撮影したものですが、交換列車が到着してすぐに信号が変わるのが素早いです。


井川線沿線では千頭に次ぐ集落であると思われる奥泉を通過。やがて右側に大きな道路橋泉大橋が見えてきます(写真55)。これは立派な上路アーチ橋。しかし道路の橋を車窓に見物しながらの鉄道旅行ということであれば高千穂鉄道がお勧めでしょう。この橋は長島ダムの建設工事のために取り付け道路として造られ、今では奥泉から接岨峡温泉・井川方面を結ぶ道路として使われているようです。そしてこの橋の下をくぐるとまもなく井川線も大井川を渡って左岸に移ります。その橋の上から進行方向左手を見ると、水力発電所の水圧鉄管と排水口が見えます(写真56)。ダムの堤体は隠れて見えませんが、これが井川線が建設される最初のきっかけとなった大井川ダムと奥泉発電所です。


橋を渡りきり、トンネルに入って出るとすぐにアプトいちしろ駅。アプトいちしろ駅からはダムの堤体を後ろ側から、そして奥泉発電所もよりはっきりと見られます(写真57)。発電所へは市代吊橋で繋がっていますが、これは産業遺産として指定されて案内板が掲げられています(写真58)。この案内板に書かれている通り、この橋は鉄道用の橋として建設され、1954年の鉄道ルート変更により道路橋に転用されたもの。1954年というと井川線が全通した年ですので、つまり大井川電力が当初建設した奥泉大井川堰堤までの鉄道がこの橋を渡っていたのだろうと推測できます。そうなると、今のアプトいちしろ駅構内が終点だったのでしょうか。木材の流送補償が目的であれば、確かにこの位置まで延ばすこともありえるでしょう。また後日別途入手した情報によると、この橋を渡った先まで一般人が立ち入り可能であり、大井川ダムの堰堤を前から撮影することもできるとか。てっきりこの橋より先は発電所施設であって一切立ち入り禁止なのかと思い込んで行きませんでしたが、それは残念なことをしました。それどころか、奥泉発電所構内には明らかに井川線旧線のものである線路が残っているとかで、それは是非とも再訪して見物したいものです。


アプトいちしろ駅では後部にED90型アプト式電気機関車を連結する作業を行うので停車時間が少し長く、また車掌さんが車内放送で是非どうぞと案内するため大方の乗客が降りて連結作業を見物していました。アプトいちしろ駅の標高は396m(写真59)。この標高を覚えておきましょう。アプトはこの方式を発明したスイス人の名前に由来しますので、つづりはABTですがドイツ語読みで半濁音です。それにしてもここもひらがな地名でしょうか。アプト市代で何がよくないのでしょうか。列車の前方にはアプト式ラックレールが間に敷設された線路が続いています(写真60)。これまでは少々頼りない線路でしたが、ここからは強力で重い電気機関車が後押しをするので重軌条化されていてPC枕木。なんでもPC枕木でアプト式のラックレールを取り付けられるようにしたのは世界初だとか。駅のホームの切れる先に90‰を示す勾配票が見えるのですが、残念ながら私のデジカメの性能ではそれを満足に写す事ができませんでした。線路を歩いていくわけにも行きませんし…。


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