2007年06月03日作成
2007年06月03日更新
The Special Providence - 書評 - 異端の数ゼロ
題名に惹かれて読んでみた本です。数学や物理学を扱う時にゼロは常に注意を払うべき対象で、それは高校レベルの数学や物理でも問題になります。単にゼロで除算してはいけないというだけの存在なら、分母がゼロになっていないかどうかをチェックするだけで済む、逆に言えば面倒な存在であるだけなのですが、しかしながら実際には分母がゼロになる瞬間というのは何か特別なことが起きていて、数学でも物理でもゼロでない場合とは別個の世界が広がっている、ということがよくあります。そういう実感が自分が触れてきた程度の数学や物理でもあるので、この本はそういった点について深く掘り下げて書いてあるのだろうと期待して読みました。
しかしながら、前半の部分についていえば若干期待はずれでした。ゼロという概念の宗教的な意味だとか、思想・哲学的な面でどのように考えられていたか、西洋人がどのようにゼロの概念を受容したかといった話が中心でした。それはゼロという概念がそれを知らなかった人間にとっては不思議なもので受け容れがたいこともあっただろうということは分かりますが、私にとってはあまりそういう思想的なことは興味がないのです。また、言葉遊びのようなことばかり繰り返していてゼロの特異性を強調していますが、何度繰り返されても別にゼロという概念の本質に迫っているわけではないので面白くないです。
後半は、後の時代の数学・物理の話が出てきて、やっと自分が期待していたような内容になります。ゼロと、それと対を成す無限大の概念が数学・物理学の中でどのような役割を果たしているかが紹介されています。極限の考え方や数論の世界、量子論、相対論といった世界を紹介し、それぞれの世界でゼロや無限大がどのような意味を表しているかを紹介しています。この本を読むと、ゼロや無限大を回避するためにうまい証明の仕方を考え出したり、新しい定義を考え出したりすることが、数学や物理の進歩に大きな功績を示してきたことが分かります。量子論や相対論にはこれまでちょっと触れたことがあって、いくらか知っている話も出てくる(マイケルソン・モーリーの実験とか)もあるのですが、それをゼロというテーマから見るとどのような意味をなしているかというところが面白いです。また、数論の話は知らないことが多くて、なかなか興味深いものでした。
全体として言えば言葉遊びが目立ってちょっと私には読みづらい面もあったのですが、後半の様々な学問でゼロと無限大が果たしてきた役割の紹介はやはり面白かったです。ゼロと無限大は対になっていて、特に無限大の話ばかり紹介されているところもあるので、本のタイトルは無限大に関するものでもよかったのでしょうけれど、やはりインパクトのあるタイトルにすることを考えるとこのようなタイトルとなるのでしょう。
異端の数ゼロ - 書評 - The Special Providence
© SpecialProvidence.net 2004-2007, All rights reserved.
webmaster@specialprovidence.net