2006年02月04日作成
2006年05月29日更新
The Special Providence - 書評 - 鉄道ゲージが変えた現代史
日清戦争前後から第2次世界大戦に至る、中国東北部(満州)における列強諸国の鉄道敷設を巡る攻防が描かれた本です。大陸では日・英は標準軌(4ft8.5in=1435mm)の鉄道を敷設していましたが、ロシアは広軌(5ft=1524mm)で敷設していました。このため、どちらのゲージで鉄道を敷設するかでそれぞれの勢力圏が決定してしまうという面があり、激しい闘争が行われました。
現代では鉄道が駄目でも自動車で輸送すればよいという面があって昔ほど鉄道の輸送力は重要視されなくなったわけですが、この当時鉄道の輸送力は圧倒的であり、特に第1次世界大戦は鉄道の輸送力で勝負が決まることがある戦いでした。第2次世界大戦においても鉄道の能力が各国軍隊の進撃速度や展開状況に影響を与えています。戦時の軍事輸送は特に巨大な輸送力を必要とするので、自動車がある程度発展してきた第2次世界大戦においてもなお鉄道の影響が致命的だったのです。「列車は国家権力を乗せて走る」とサブタイトルにありますが、弱肉強食の帝国主義時代にその国家権力を担うのがまさに軍隊であり、軍事輸送の観点からもこの敷設競争は重要なものだったのです。そもそもロシアが広軌を採用したのはヨーロッパから攻め込まれた時の敵の軍事輸送を阻害するためだったという有力な説もあります。
著者は鉄道ファンではなく、外務省で外交史を研究している方です。過去の条約や協定、その他の文書などをたどって丹念に中国東北部における鉄道勢力図がどのように移り変わっていったかを描いています。歴史的背景を説明しながら描いていくため、なぜこのような鉄道網に発展していったのかをよく理解することができます。日・英が標準軌を採用しているというとあたかも大陸での鉄道敷設競争において日英が協力しているかのように思われるかもしれませんが、日英同盟の時代ならともかくその後はいろいろな面で競合する計画を出してくるなど、やはり列強間の利害の対立が見られます。最終的に満州事変などもあってこの地域の鉄道網は全て日本の手中に帰しますが、第2次大戦に敗れて全てを失います。
「鉄道ゲージが変えた現代史」と言いますがそれはちょっと言い過ぎで、実際には双方の勢力圏が決まった結果それぞれの地域にそれぞれのゲージの鉄道が敷かれたという面が強いでしょう。しかし歴史に興味がある人なら面白く読める本だと思います。
鉄道ゲージが変えた現代史 - 書評 - The Special Providence
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