2007年01月29日作成
2007年01月31日更新
The Special Providence - 書評 - 中立国の戦い
第2次世界大戦で中立の立場をとった国々、特にスイス、スウェーデン、スペインの3カ国に焦点を当てて、どのような経緯で中立を取ることになったのか、中立を維持するためにどのような努力を払ったのかを紹介した本です。日本ではともすれば、これらの国々が中立を維持したのは当然のことだと捉えたり、容易に中立を維持して戦争の惨禍を免れることができたかのように捉えたりする見方もありますが、実際はどうだったのかを詳しく説明しています。
第2次世界大戦のヨーロッパの戦いでは、ドイツや英仏ソのように自分の意思で戦争に関わった(ソ連は独ソ戦では一方的に侵略を受けたものの、その前のソ芬戦争やポーランド東部併合では主体的に戦争加入しています)国々もありますが、実は多くの国はこれらの国々の戦争に伴って巻き込まれていったという側面が強くあります。東欧諸国はある国はドイツに併合され、ある国はほとんど強要されて対ソ連戦争に参加させられます。また西では中立を宣言していたオランダやベルギーを、ただフランスへの通り道にするという目的で一方的にドイツは攻撃しています。望まぬ戦争に巻き込まれた国が多くある中で、この本で取り上げた3つの国はどうして中立を維持するという選択を取ったのか、どうしてそれを守り通すことができたのか、といったところを解説しています。
スイスは昔から永世中立国として有名な国ですし、スウェーデンもナポレオン戦争以来戦争に加わっていない国です。スペインは戦争の歴史の繰り返しなのでこの2カ国とは少し事情が異なっています。そこで、スイスとスウェーデンについては歴史的にどのような経緯で中立を国是とするようになったのかの説明もなされています。ただ、長く中立政策を採っていたから第2次世界大戦でも中立を維持したというわけでは必ずしも無く、これら2カ国もナチスドイツの破竹の進撃に影響を受けて参戦を模索したり、あるいはドイツから強力な要求を受けたりしています。一方でナチスの侵略の脅威も感じてどのように国を守るかの手立てに必死になる様子も描かれています。
また、これもあまり知られていないことでしょうけれど、これらの中立を結果的に維持することができた国々も、枢軸国・連合国双方から様々な攻撃を実際に受けています。特にスイスに関しては繰り返し領空侵犯が行われ、あくまで公式には「誤爆」という立場ではあるものの連合国の爆撃機による空襲を一度ならず受けています。こうした数々の軍事的圧力に対してこれらの小国がどのように抵抗してきたのかもよく描かれています。スイスはエリコン、スウェーデンはボフォースといった有名な機関砲メーカーがありますが、それはこうした背景の下に生まれてきたといえるわけです。スイスもスウェーデンも人口が少ないためにヨーロッパ列強の狭間で生きていくというのは大変なことです。日本は人口が多くて他国から離れた島国でもあるのでそういった面を感じることがほとんど無いのは幸せというべきでしょう。
スペインについてはこれら2カ国とはちょっと違った面があり、スペイン内戦で疲弊した国の事情があったようです。またこれらの国の他にイランやトルコについても若干取り上げられています。イランは連合国側によって対ソ連援助物資輸送経路にするために一方的に侵略を受けています。いざ戦争となると双方とも国際法などどうでもよく勝てば官軍というわけです。大戦争の狭間で中立を維持するということのコストがどれほどのものなのかを教えてくれる本です。
中立国の戦い - 書評 - The Special Providence
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