2007年01月14日作成
2008年01月15日更新
The Special Providence - 書評 - 日本人はなぜ戦争をしたか
昭和16年に内閣に総力戦研究所という組織が作られて、30台の官僚や軍人、民間人が集められて模擬内閣を編成し、日米戦の推移について研究をしていた、ということについて取材をして書かれている本です。「昭和16年夏の敗戦」というのは、もちろん総力戦研究所でシミュレーションした結果が日本の敗北だったから、ということです。もちろん完全に一致しているわけではないのですが、あちこちの戦局推移が実際の戦争と似ていて面白かったです。
先の大戦については、よく海上輸送力の問題が取り上げられます。日本は資源を海外から輸入しなければ成り立たない国で、石油を禁輸されてそれを入手するために東南アジアへ侵攻して戦争を始めたのに、肝心の石油の輸送ルートについては無関心だったために輸送船を攻撃されて資源の途絶、敗戦へつながったというのは、最近ではかなり認識されているように思います。全くといっていいほどに現実の政府が無策だったのに対して、この模擬内閣では考慮されていて船舶の損失量についてもシミュレーションされているというのが興味深いところです。一体どうやって潜水艦による船舶の損失を予想するのだと思ったのですが、ロイズ(イギリスの保険組合)の船舶統計を使用したそうな。1941年の時点で既にヨーロッパでは第2次世界大戦が始まっていますので、大西洋をイギリスへ軍需物資を運ぶ船舶が行き交っていて、これに対してドイツのUボートが盛んに攻撃をしていました。したがってロイズの船舶統計には潜水艦攻撃による船舶損失のデータが出ていて、これを元に日本の船舶損失予想を計算したとのこと。言われてみればなるほどと思ってしまいます。
しかし、シミュレーションと言う割には思ったほど図上演習のようなことはやっていないのだなと思ってしまいました。割と、相手国の状況は天下り的に与えられているように思いますし。これでは相手国の状況を恣意的に操作するだけで結論はどうにでも操作できそうな気がします。もっともこの例で実際にそういう操作をしたとは思わないですけど。現にソ連の対応などは日本にとって最悪と思える設定をしています。
この本では、総力戦研究所そのものの紹介もありますが、割とそれに関連して東条英機の動向について詳しく記述していて、かなり同情的な書き方がされていて驚きました。人は書き方による、ということでしょうか。牟田口廉也について擁護する人はほとんどいないと思いますが。
日本人はなぜ戦争をしたか - 書評 - The Special Providence
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