2007年03月11日作成
2007年03月11日更新
The Special Providence - 書評 - 恐るべき欧州戦
第二次世界大戦の特に欧州戦において、あまり知られていない16の話を紹介した本です。ただ、前の3つの話はかなり詳細に書かれているのに対し、後の13の話はそれに比べると扱いがコンパクトでちょっと違った感じ。第5章としてまとめられている5つの話は、戦場の怪奇現象の話といった類のもので戦術・戦略に関する話ではありません。
最初の章で出てくるのはドイツを騙した二重スパイの話。日本人は生来的に情報活動が苦手で第2次世界大戦でも情報戦では後手後手に回っていたと思うのですが、ドイツも案外失敗していたのだなと思います。情報戦ではイギリスが一枚も二枚も上手というところでしょうか。こういう裏話を聞かされると、一体どんな情報を信じればよいのかという思いに捉われてしまいます。国家間の謀略が渦巻く中ではどのような情報も信用できないのでしょうか。ともすると、現在公開されている、この本に載っているような話ですら本当のことではないのかもしれないと感じます。
第2章で紹介されているのはヒトラーが指揮を執った総統本営の話。ヒトラーの本営というとヴォルフスシャンツェ(狼の巣)という名前の施設が有名ですが、点々とする戦場を追ってなのかあちこちに総統本営とされる施設が建設されて次々に移っていったということが紹介されています。清洲-小牧-岐阜-安土と移動していった織田信長のようなものか。もっとも、織田信長の場合は京都の方へ向かって首尾一貫して移動しているのですけど、ヒトラーの移動の仕方はよく分かりませんしほんのちょっと使って次に移動するというようなことの繰り返しです。また、機動本営として総統専用列車が用意されていて、なぜかこの列車の名前が「アメリカ」と呼ばれていたのは知られていますが、これに乗って点々とするヒトラーを追って側近や官僚を乗せた列車が走り回っていたとかでなかなか面白いです。ヒトラーの決裁を得ないと何事も進まないためにベルリンの行政機関が必死に追い掛け回していたのでしょうか。1941年のバルカン作戦「春の嵐」の作戦指揮を執った時にはオーストリアのウィーン南西にあるメーニッヒキルヘンという駅に機動本営を止めていたということで、その周辺のあちこちに側近の列車が集まってきている様子が本文で紹介されていました。こんなに滅茶苦茶に列車が走り回っていると一般の列車のダイヤは一体どうなっていたのでしょうか。
最初の3章はきっちり書かれているのですけど、ほかは小話といった程度のもので、もう少し中身を期待したかったところです。
恐るべき欧州戦 - 書評 - The Special Providence
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