2006年10月22日作成
2006年10月22日更新
The Special Providence - 書評 - 流血の夏
第1次ソ芬戦争(冬戦争)を扱った前作「雪中の奇跡」に続いて第2次ソ芬戦争(継続戦争)について描いた本です。
冬戦争において理不尽にソ連に侵略を仕掛けられ、民族の故地たるカレリア地方の大部分を失うはめになったフィンランドは、それからまもなく第2次世界大戦の独ソ戦開始に伴ってナチス・ドイツに味方して参戦し、カレリアの奪還を目指すことになります。このためにこの戦争は継続戦争と呼ばれているわけです。冬戦争時にはまだドイツとソ連の仲がよくてドイツはフィンランドに対しては敵対的とも呼べる態度をとったのですが、ソ連に侵攻するにあたってはフィンランドを味方に付け、フィンランドにドイツ軍を配備してソ連領への侵攻を行うと共に大量の武器を援助してフィンランド軍を強化し、共に侵攻します。もっとも、フィンランドとしては冬戦争で失った土地の回復を目指しているだけでそれ以上を望んでいたわけではないので、レニングラード包囲戦に際しても冬戦争以前の自国領に留まってそれ以上の進撃をしようとはしませんでした。もっとも、米英からの対ソ援助物資の到着するムルマンスク港とその他のソ連領を結ぶ鉄道線を遮断するために進撃したところが冬戦争以前においてもソ連領であったため連合国からは侵略と見なされ、枢軸国の一員と位置づけられてしまう羽目になります。
この本は、開戦時からの歴史もおおよそ説明されているものの、本題はタイトルにあるとおり「流血の夏」こと1944年6月の戦闘にあり、大半の記述がこの1ヶ月に対して費やされています。開戦後旧領土を回復する線まで前進していたフィンランド軍はその後大きな戦闘を経験せずに過ごしてきたのですが、1944年6月にいたってソ連はこの方面でも大規模な反攻作戦を開始することとなり、膨大な部隊を費やしてフィンランド軍に襲い掛かってくることになります。前作で描かれている冬戦争の時点ではソ連軍はスターリンの粛清から立ち直っておらず、装備こそ優れているものの間抜けな行動ばかり繰り返して、寒さと雪に苦しめられていますが、独ソ戦で鍛え上げられたソ連軍は1944年6月の攻勢では非常に優秀で、装備の優勢もそのまま、さらに夏の戦闘なので寒さと雪の妨害もないというさらに悲惨な状況での戦闘となっています。もっとも、ドイツがフィンランドに供与した様々な兵器は冬戦争冬至に比べてとても優れていて、特にパンツァーファウストやパンツァーシュレックなどの対戦車ロケット火器を自在に使いこなした戦闘は見事です。
圧倒的なソ連軍の1ヶ月にわたる攻勢の中で、奪還したカレリア地方の大半を再び失うに至るのですが、そこで再び奇跡を起こしてソ連軍の進撃を止めてしまうのが見事です。バグラチオン作戦発動のためにソ連側の一部の部隊が引き抜かれることになったというのも大きいのですが、フィンランド軍の必死の粘りで同じ場所を巡って何度も繰り返される攻防の凄まじさの描写が強烈な印象です。
最後は外交的にうまく立ち回って何とか休戦に持ち込むことに成功し、再び独立の保持に成功するわけですが、その過程でリュティ大統領の背負った運命があまりに苛酷という他ありません。そもそもフィンランドは第2次世界大戦に参戦するべきではなかったのかもしれませんが、それは後知恵なのでしょう。この戦争と前後して独立を失ったバルト三国の運命と比較して、ここまでの犠牲を払って独立を維持することにどのような意味があったのかも説明されています。
流血の夏 - 書評 - The Special Providence
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